長崎・香焼「ぼた山」を歩く|子どもの頃に遊んだ、あの場所へ

ずっと「ぼた山」と呼んでいた場所へ

家からすぐ近くに、昔から「ぼた山」と呼んでいる場所があります。

小学生の頃は、ここが遊び場でした。

友達と走り回ったり、ソフトボールの練習をしたり、自転車で隣の地区の床屋へ行く近道にしたり。

あまりにも身近すぎて、「なぜ、ぼた山っていうんだろう?」なんて考えたこともありませんでした。

ところがNAGASAKI MAGAZINEを書き始めて、地元・香焼を改めて歩くようになると、今まで気にも留めなかったことが妙に気になります。

そもそも、なんでここは「ぼた山」なんだろう。

そう思ったら、久しぶりに歩いてみたくなりました。

一度は行こうとしたものの、直前に雨が降ってきて断念。

考えてみると、子どもの頃も雨の日にここで遊んだ記憶がほとんどありません。

だったら、やっぱり晴れた日に行こう。

天気のいい日に改めて、子どもの頃の遊び場だった「ぼた山」を歩いてみました。


まずは、ぼた山に入らず海沿いへ

今回は竹崎側からスタート。

普通ならそのままぼた山へ入るところですが・・・。

せっかく久しぶりに来たので、いきなり寄り道します。

ぼた山の外側にある海沿いへ。

ここも子どもの頃によく遊んだ場所です。

海沿いには、上のぼた山側へつながっていた土管があります。

昔は友達とこの土管を通路代わりにして遊んでいました。

今は上の方まで草が生い茂っているので、さすがに通るのは難しそうです。

さらに外側へ進むと、海が一気に開けます。

景色は本当にきれい。

ただ、この辺りは昔から波が高く、学校や親から「ここでは泳ぐな」と言われていた場所でもあります。

・・・一度、友達と泳いで、どえらい怒られた記憶があります(笑)。

今は岩場やテトラポッド付近で釣りをする人も見かけます。

私は釣りをしないので、何が釣れるのかは分かりませんが(笑)。


子どもの頃は「遊び場」だった

海沿いから奥へ回り、ぼた山の中へ。

今回アイキャッチに使った場所です。

大人になって改めて見ると、本当に広い。

でも小学生の頃は、この広さを特別だと思ったことすらありませんでした。

当時、香焼では年に2回、地区対抗の球技大会がありました。

男子はソフトボール、女子はフットベース。

私はサッカー部でしたが、大会前になると部活動も休みになり、それぞれの地区で練習します。

私が住んでいた尾ノ上地区では、このぼた山でソフトボールの練習をしたり、ほかの地区と練習試合をしたりしていました。

今ではその球技大会もなくなりました。

一方、秋に行われていた「サッカー祭り」は今も続いていて、私も毎年子どもたちの手伝いに顔を出しています。

ちなみに、うちの娘二人は「行かない」と言うので、なぜか父親だけ参加しています(笑)。

そして、ここで写真を撮っていたら、どうでもよさそうな記憶まで蘇ってきました。

ソフトボールの練習中、草むらへボールを取りに行って、右手の薬指を足長バチに刺されたこと。

刺された指まで覚えているから不思議です。


山裾に広がっていた「草笛」の群れ

さらに歩いていると、山の裾に背の高い草がずらり。

前回訪れた「赤土の浜」でも見かけた、子どもの頃から「草笛」と呼んでいた草です。

ただ、今回は規模が違いました。

山裾に沿って一面に広がっていて、なかなかの迫力。

昔なら気にも留めずに通り過ぎていたような景色なのに、大人になって歩いてみると、こういうものに足が止まります。

※この周辺は歩ける場所もありますが、整備された遊歩道ではありません。土や砂利、草が生い茂った場所、大きめの石がある場所もあります。歩く場合はサンダルなどを避け、歩きやすい靴がおすすめです。


ぼた山の先端から、高島を望む

山裾を抜けて、ぼた山の先端付近へ。

ここまで来ると視界が一気に開け、海の向こうには高島が見えてきます。

写真で見ると少し遠く感じますが、実際にその場に立って肉眼で見る高島は、思っていた以上に近い。

海と空の間に高島がどんと浮かんでいるように見えて、久しぶりにここまで歩いてきた自分でも、思わず足を止めました。

子どもの頃は、この景色も当たり前だったのかもしれません。

でも大人になって改めて見ると、

「ここから高島って、こんなに近くに見えたんだな」

と、ちょっと驚きます。


ぼた山は、床屋へ行く「近道」でもあった

ぼた山は遊び場であると同時に、子どもの頃の私にとっては隣の地区へ抜ける道でもありました。

今は竹崎側から道路が通り、バスも走っています。

でも私の記憶では、中学生になる前くらいまでは現在の切り通し付近も今とは景色が違い、隣の地区へ行くときは、ぼた山を抜けるか、山道を通っていました。

小学生になってからは、自転車でぼた山を突っ切って隣の地区の床屋へ。

保育所の頃は、ばあちゃんと旧山道を歩いた記憶があります。

ばあちゃんの家の近くに山道へ入る脇道があり、そこを通るのが一番の近道でした。

ただ、一人では怖かった。

小学生になっても一人では通りたくなくて、友達がいれば一緒に歩く。

そんな道でした。

今回、帰りにその旧山道を見てみると・・・。

現在は柵が設置され、入れないようになっていました。

道そのものは変わっても、入口を見るだけで、ばあちゃんと歩いた頃の記憶が戻ってきます。


化石を探した、小さな山

昔のぼた山には、人が登れるくらいの石や土の小さな山がありました。

普段はあまり一緒に遊ばなかった友達に、化石に詳しい子がいて、

「ここ、化石が採れるよ」

と教えてもらったことがあります。

その子について行って、葉っぱや貝のような化石を探した記憶があります。

今回歩いていて、それまで完全に忘れていたその光景まで突然蘇ってきました。

本当に化石だったのか。

あの小さな山が何だったのか。

今となっては分かりません。

でも、こういう記憶こそ、昔の遊び場を歩く面白さなのかもしれません。


ところで、「ぼた山」って何だ?

今回歩こうと思った一番のきっかけが、これでした。

なぜ、ここを「ぼた山」と呼ぶのか。

一般に「ぼた」とは、炭鉱で石炭を採掘・選別した際に残る岩石などを指し、それを積み上げてできたものが「ぼた山」と呼ばれます。特に「ぼた」という呼び方は九州地方を中心に使われてきました。

そして香焼は、実際に炭鉱で栄えた土地です。

長崎市の資料によると、香焼では安保地区を中心に炭鉱開発が進められ、明治32年(1899年)には大阪舎密工業が進出。その後、川南鉱山、香焼鉱業へと発展し、香焼の炭鉱は昭和39年(1964年)に閉山しました。

ただし、今回歩いたこの場所について、

「ここに炭鉱の廃石を積んだため、ぼた山と呼ばれるようになった」

と直接確認できる資料までは、今回見つけることができませんでした。

香焼の炭鉱の歴史と「ぼた山」という言葉の意味を考えると関係はありそうですが、ここはもう少し調べてみたいところです。

地元でこの場所の昔を知っている方がいたら、ぜひ教えてください。


「テツゲンの土地だった」昔聞いた話を調べてみた

もう一つ、昔から頭の片隅に残っていた記憶があります。

子どもの頃、大人から、

「ここはテツゲンという会社の土地」

というような話を聞いた記憶がありました。

今回調べてみると、これは記憶だけの話ではありませんでした。

株式会社テツゲンは、香焼炭鉱の経営を継承して以降、香焼に土地を所有しており、現在はその社有地をメガソーラー用地などとして活用していることを公表しています。

昔ここを通った記憶では、大きなタイヤのようなものや廃材が積まれていた場所もありました。

もちろん現在は景色も変わっています。

子どもの頃の記憶の中にはなかったメガソーラー。

久しぶりに歩いたぼた山の中で、ここだけは特に「変わったな」と感じた景色でした。


思い出は、小学生の頃だけじゃなかった

ぼた山を歩きながら思い出したのは、小学生の頃のことだけではありませんでした。

中学生から高校生くらいの頃、ばあちゃんが飼っていたゴールデンレトリーバーのチャッピーを、よくここへ散歩に連れてきていました。

女の子で、とにかく人懐っこい犬。

人がいないときには広い場所で思い切り遊ばせていたのですが、とにかく帰りたがらない(笑)。

私が草むらに隠れて姿を消すと、どれだけ遠くにいても走って探しに来る。

そして散々遊んだ帰りには、今度は歩かなくなる。

最後は30kgほどあるチャッピーを抱えて、ばあちゃんの家まで帰ったこともありました。

そして20代前半の頃。

今度は実家で飼っていたキャバリアのルーニーとも、この海沿いによく遊びに来ました。

おもちゃを投げて、ルーニーと一緒にダッシュ。

もちろん毎回負けます(笑)。

小学生の頃は友達と遊び、中高生になるとチャッピーを連れて歩き、20代になるとルーニーと海沿いを走る。

今回久しぶりに歩いてみて気づいたのは、ぼた山には子どもの頃だけではなく、その後の自分の記憶もいくつも残っていたということでした。


ぼた山を抜けると、今はチューリップ畑

ぼた山を歩き、安保側の出口へ。

ここは春になると、色とりどりのチューリップが咲く場所です。

テツゲンによると、地域からの「香焼を花のある街にしたい」という思いを受け、2005年から社有地の一部をチューリップ畑や駐車場、展望台として無償開放しています。現在の「香焼チューリップまつり」へとつながっています。

そして私も、毎年ここへ子どもたちとチューリップを見に来ています。

子どもの頃は、友達とぼた山を抜けて隣の地区へ向かっていた場所。

今では、自分の子どもたちと春のチューリップを見に来る場所になりました。

こうして考えると、景色だけでなく、自分の立場もずいぶん変わったものです。


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今回歩いたぼた山は、有名な観光地ではありません。

私にとってはむしろ、身近すぎる場所でした。

子どもの頃に遊び、ソフトボールをして、床屋へ行くために自転車で走った場所。
中高生になればチャッピーを連れて歩き、20代になるとルーニーと海沿いで遊んだ場所。
振り返ってみれば、ぼた山には自分のいろんな時代の記憶が残っていました。

それが大人になって改めて歩いてみると、炭鉱の歴史につながり、土地の使われ方が変わり、昔は知らなかったことがいくつも見えてきました。

そして何より面白かったのは、景色を見るたびに忘れていた記憶が戻ってきたこと。

風が吹けば、冬に鼻を垂らしながら自転車で床屋へ向かったことを思い出す。

草むらを見れば、足長バチに刺された右手の薬指まで思い出す。

遠くから夕方5時のチャイムが聞こえていたことまで蘇ってくる。

場所には、記憶が残っている。

そんなことを感じた今回のまち歩きでした。


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まとめ|ぼた山を歩いていたら、小学生の自分に戻っていた

かなり久しぶりに歩いた、香焼のぼた山。

最初は、

「そもそも、なんでぼた山っていうんだろう?」

それを知りたくて歩き始めました。

でも実際に歩いてみると、それ以上に出てきたのは自分自身の記憶でした。

ソフトボール、床屋、ばあちゃんとの山道、化石探し、泳いで怒られた海。
そして少し大きくなってからの、チャッピーやルーニーとの時間。

歩いているうちに、小学生の頃だけではなく、中高生、20代と、その場所に残っていた自分の記憶が次々と蘇ってきました。

ずっと忘れていたことまで、次々と思い出しました。

景色は少しずつ変わっています。

通れなくなった道もあり、メガソーラーもできました。

それでも海はそこにあり、山があり、相変わらず風が吹いている。

ぼた山を歩いていたはずなのに、気づけば小学生の頃の自分を辿っていました。

知っているつもりの場所ほど、もう一度歩いてみると面白い。

今回もまた、そんなことを教えてもらった気がします。


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この記事を書いた人

道下 真悟(みちした しんご)

有限会社長崎ダイレクトセンター 代表取締役 / Web解析士

長崎生まれ、長崎育ち。

Webサイト制作やDM発送など、企業の情報発信をサポートする仕事に携わる一方で、休日や仕事の合間にはカメラを片手に長崎の街を歩き、坂道や路地、海、港、歴史ある街並みを巡っています。

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