
家族の会話から始まった「ぬっか」の疑問
長崎の夏になると、あちこちで聞こえてくる言葉があります。
「今日もぬっかね~」
「ぬっか」は、長崎弁で「暑い」「暖かい」といった意味で使われる言葉。
私たちにとっては昔から耳にしてきた、ごく普通の長崎弁です。
ところが先日、家族で何気なく話していると、ちょっと面白いことに気づきました。
最近あまりにも暑いので、妻と
「今日もばりぬっかね~」
なんて話していたときのこと。
そばにいた娘に、ふと思いついて聞いてみました。
「“ぬっか”って意味わかる?」
すると、
「暑いとか、暖かいとかやろ?」
おお、ちゃんと知っとる。
そこで続けて、
「じゃあ学校で友達と“ぬっかね~”とか言う?」
と聞いてみると――
「言わんし!w」
即答でした。
じゃあ何て言うのか聞くと、
「暑か!」
「ばり暑か!」
……あれ?
そういえば、自分たちも子どもの頃って
「ぬっかね~」なんて言ってなかったような……。
ここから家族で始まった、
「“ぬっか”って、何歳くらいから使い始めるんやろ?」
という、どうでもよさそうで意外と面白い長崎弁談義。
もしかすると「ぬっか」は、意味は子どもの頃から知っているのに、大人になってから自然と使い始める・・・
“R指定”の長崎弁なのかもしれません。
※もちろん我が家調べです(笑)。
「ぬっか」ってどんな長崎弁?
「ぬっか」は、長崎で昔から使われている方言のひとつ。
意味としては主に、
「暑い」「暖かい」
といった感覚を表します。
真夏なら、
「今日はぬっかね~」
「ばりぬっか!」
「外はぬっかばい」
といった具合。
「ぬっか」の意味や基本的な使い方については、NAGASAKI MAGAZINEを始めたばかりの頃、VOL.02でも紹介しました。
今回はそこから少し違う方向へ。
「意味」ではなく、“誰が、いつ頃から使う言葉なのか?”
そんなところを考えてみます。
🔗 関連記事
長崎弁「ばりぬっか!」とは?意味や使い方を長崎人がわかりやすく解説
VOL.02では「ばりぬっか!」の意味や使い方を紹介しています。
意味は知っている。でも「言わんし!」
今回、最初に面白いと思ったのが、小学5年生の娘の反応でした。
「ぬっか」の意味を聞けば、普通に分かる。
誰かが「今日ぬっかね~」と言っていても、何を言っているのかちゃんと理解できる。
ところが、
「自分で使う?」
となると、
「言わんし!w」
になる。
代わりに出てくるのは、
「暑か!」
「ばり暑か!」
同じ長崎で育って、同じように方言に囲まれていても、知っている言葉と、自分が実際に使う言葉は少し違うようです。
これが妙に面白くて、妻と二人で自分たちの子どもの頃を思い返してみました。
よく考えたら、自分たちも使ってなかった?
私たちが子どもの頃も、
「ぬっか」
という言葉自体は普通に知っていました。
親や祖父母、近所の大人たちが、
「今日はぬっかね~」
と話しているのを何度も耳にしていた記憶があります。
だから意味を教えてもらったというより、いつの間にか知っていた言葉に近い。
ところが、自分たちが友達同士で、
「今日ばりぬっかね!」
と言っていたかというと……。
たぶん、あまり言っていない(笑)。
「暑かね~」
「ばり暑か!」
こっちだった気がします。
妻とも、
「じゃあ、いつから“ぬっか”って言い始めた?」
「社会人になってから?」
「いや、20代でもそんな言ってなかったような・・・」
と話していたんですが、
結局、誰も答えが分からない(笑)。
気づいたら普通に使っていました。
「ぬっか」は大人になったら解禁?“R指定”長崎弁説
ここで出てきたのが、我が家のくだらない仮説。
「ぬっかって、R指定なんじゃない?w」
もちろん、本当に年齢制限があるわけではありません(笑)。
子どもだって意味は知っている。
言ってはいけない言葉でもない。
なのに、なぜかある程度大人になると、
「今日もぬっかですね~」
が急にしっくりくるようになる。
考えてみれば、「ぬっか」って友達同士だけじゃなく、大人同士のちょっとした挨拶にもものすごく使いやすいんですよね。
仕事先で会った人に、
「こんにちは。今日もぬっかですね~」
近所の人と顔を合わせて、
「ぬっかですね~」
外で作業している人に、
「今日もぬっかですね~」
これだけで会話が始まる。
もしかすると年齢そのものではなく、話す相手や人間関係が広がっていくにつれて「ぬっか」の出番が増えていくのかもしれません。
そう考えると、大人になって自然と使い始めたのも少し納得できます。
今や「こんにちは」=「ぬっかですね~」くらいある
そして最近は、とにかく暑い。
真夏だけじゃなく、「まだこんなに暑い?」と思うような日も増えて、外に出れば、
「ぬっかですね~」
を言う回数がとにかく多い。
先日は車に表示された外気温を見たら、なんと41℃。
思わず二度見しました(笑)。
ここ数年、「こんにちは」と同じくらい「ぬっかですね~」で会話を始めている気すらします。
長崎の夏の挨拶、
「こんにちは」
ではなく、
「ぬっかですね~」
説(笑)。

ところが令和世代は……「ぬっかって何?」
今回の家族の会話で、「ぬっか」は使わなくても意味はちゃんと伝わっているんだなと思っていました。
小学5年生の娘は普段、
「ぬっかね~」
とは言わない。
でも、意味を聞けば、
「暑いとか、暖かいとかやろ?」
と普通に分かる。
ところが・・・。
この記事を書いたあと、近くにいた小学1年生の娘にも何気なく聞いてみました。
「“ぬっか”って意味わかる?」
すると返ってきたのは、
「ぬっか? なにそれ?」
・・・知らんのかい!(笑)
てっきり意味くらいは知っているものだと思っていたので、これにはびっくり。
そして、よく考えてみるとさらに面白いことに気づきました。
私たち夫婦も、ばあばも昭和生まれ。
小学5年生の娘は平成生まれ。
小学1年生の娘は令和生まれ。
気づけば我が家には、昭和・平成・令和の3つの時代がそろっています(笑)。
昭和世代――「ぬっか」を知っている。そして今は普通に使う。
平成世代――意味は知っている。でも「言わんし!」。
令和世代――そもそも「ぬっか」の意味を知らない。
もちろん、これは我が家だけの超・局地的調査です(笑)。
同じ世代でも家庭や地域によって全然違うと思います。
それでも、同じ家族の中でここまで違うというのは面白い。
方言って「使う・使わない」だけじゃなく、その前に「知っている・知らない」という段階まであるのかもしれません。
方言は「使う・使わない」だけじゃないのかもしれない
方言というと、
「若い世代が使わなくなった」
「昔の言葉が消えていく」
という話になりがちです。
もちろん、実際に使われなくなっていく言葉もあると思います。
でも今回の「ぬっか」のように、
自分でも使う人。
自分では使わないけれど、意味は知っている人。
そして、まだ意味そのものを知らない人。
同じ家族の中でも、方言との距離はそれぞれ違う。
そして面白いのは、それがこの先ずっと同じとは限らないことです。
今は「言わんし!」と言っている娘が、大人になったら普通に、
「今日もぬっかですね~」
と言っているかもしれない。
今は「ぬっかって何?」と言っている娘も、これから家族や周りの人たちの会話を聞くうちに、いつの間にか意味を覚えるのかもしれません。
方言って、教科書で覚えるものではなく、家族や近所の人たちの会話を聞きながら、知らないうちに自分の中へ入っていくものなのかもしれません。
今回「ぬっか」の話をしていて、そんなことをさらに強く感じました。
SAKAMACHI SUPPLY的な視点
SAKAMACHI SUPPLYでは、長崎の坂や街並み、猫、海、そして方言など、長崎の日常にあるものをデザインしています。
「BARI NUKKA!」も、そのひとつ。
最初にデザインしたときは、
「ばりぬっか!」=長崎らしい面白い言葉
というところから始まりました。
でも今回、家族で話してみて改めて感じたのは、「ぬっか」という言葉の面白さは意味だけじゃないということ。
子どもの頃から耳にして、いつの間にか意味を知っていた言葉。
自分ではあまり使わなかったのに、大人になったら自然と使っている。
そして今、その言葉を聞いて育っている子どもたちにも、「意味は知っているけど使わない」「まだ意味を知らない」という違いがある。
でも、そんな違いも含めて、方言が世代を越えて伝わっていく途中なのかもしれません。
そんな何でもない日常の中に残っている長崎も、SAKAMACHI SUPPLYで形にしていきたいもののひとつです。
この街の言葉が、デザインになる。
「BARI NUKKA!」という文字を見るたびに、真夏の長崎で誰かが言っている、
「今日もぬっかね~」
という声まで聞こえてきそうです。
👉 SAKAMACHI SUPPLY「BARI NUKKA!」シリーズはこちら
🛍️ SAKAMACHI SUPPLY
SAKAMACHI SUPPLYでは、長崎の「坂」「港」「方言」「街の風景」をモチーフにしたアイテムを展開しています。
長崎を知っている人には「懐かしい」。
長崎を知らない人には「なんだろう?」と思ってもらえる。
そんな**「長崎らしさ」**を、シンプルなデザインに込めています。
まとめ|あなたは何歳から「ぬっか」を使い始めましたか?
「ぬっか」の意味は、子どもの頃から知っていた。
でも自分では使っていなかった。
そして、いつからか分からないけれど、今では普通に、
「今日もぬっかですね~」
と言っている。
ところが今回、さらに話を聞いてみると、
平成生まれの娘は「意味は知っているけど使わない」。
令和生まれの娘は「そもそも意味を知らない」。
まさか「ぬっか」という一つの言葉から、昭和・平成・令和の違いまで見えてくるとは思いませんでした(笑)。
もちろん、これはあくまで我が家の場合。
だからこそ、ますます聞いてみたくなります。
長崎のみなさんは、子どもの頃から「ぬっか」って言ってましたか?
それとも、
意味は知っていたけど、使い始めたのは大人になってから?
普段何気なく使っている方言も、少し立ち止まって考えてみると、その人の記憶や家族、世代まで見えてくる。
長崎弁って、やっぱり面白い。
そして今日もたぶん、長崎のどこかで聞こえてきます。
「いや~、今日もばりぬっかね!」
・・・「ぬっか」、やっぱりR指定なのかもしれません(笑)。
📌 関連記事
坂
長崎の街を象徴する「坂」。
その名前の由来や歴史、坂から見える景色などを紹介。
まち歩き
観光地だけではない、長崎の日常を歩く。
住宅街や坂道、公園、街並みなど、歩いて見つけた長崎の魅力をご紹介します。
長崎弁
「とっとっと?」「好きばい!」など、
長崎で使われる言葉や方言の意味、面白さを紹介。
猫
長崎の街で出会う猫たち。
坂の街と猫の風景など、長崎ならではの魅力を紹介。
港・海
長崎の港や海辺で出会う風景。
漁港や砂浜、海と暮らす街など、長崎ならではの魅力を紹介。
長崎の自然
長崎の山や森、公園など、身近にある自然の風景。
暮らしのすぐそばで出会える、長崎の自然や季節の魅力を紹介。
長崎のイベント
長崎の街で開かれる、さまざまなイベント。
お祭りや花火、季節の催しなど、人が集う長崎の風景や魅力を紹介。
NAGASAKI MAGAZINEについて
NAGASAKI MAGAZINEは、長崎の坂や方言、港町の風景、歴史、そして暮らしの魅力を発信するWEBマガジンです。
「長崎って面白い。」
そんな新しい発見を、少しずつお届けしていきます。
この記事を書いた人
道下 真悟(みちした しんご)
有限会社長崎ダイレクトセンター 代表取締役 / Web解析士
長崎生まれ、長崎育ち。
Webサイト制作やDM発送など、企業の情報発信をサポートする仕事に携わる一方で、休日や仕事の合間にはカメラを片手に長崎の街を歩き、坂道や路地、海、港、歴史ある街並みを巡っています。
NAGASAKI MAGAZINEでは、実際に自分の足で歩き、見て、感じた長崎の魅力を写真とともに発信中。
有名な観光地だけでなく、何気ない坂道や住宅街、地元の人しか知らない景色まで、「歩いてこそ見えてくる長崎」をテーマに、この街の魅力を一つひとつ記録しています。
これからも長崎の街を歩きながら、この街の魅力を皆さんにお届けしていきます。

