「それ、なおしとって!」長崎では当たり前?「なおす=片づける」という言葉

「なおす」って、修理することじゃないの?

「ランドセル、ちゃんとなおしとかんばよ〜」

長崎で暮らしていると、ごく普通に耳にするこんな言葉。

意味はもちろん、

「ランドセルをちゃんと片づけておきなさい」

です。

ところが、長崎を離れてこの言葉を使うと、

「え?ランドセル壊れたの?」

なんて反応をされることもあるそうです。

そう言われてみれば、「直す」といえば壊れたものを修理すること。

でも長崎では昔から、物を片づけたり、元の場所にしまったりすることも、ごく自然に「なおす」と言います。

あまりにも普通に使っているので、方言だと意識したことすらない人も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな長崎の日常に溶け込んでいる言葉、「なおす」について紹介します。


長崎では「片づける」も「なおす」

長崎の日常には、「なおす」という言葉が本当に何気ない場面で登場します。

朝、学校へ行く前なら、

「昨日の教科書、ちゃんとなおした?」

子どもが遊び終わったあとなら、

「おもちゃなおしてから、ご飯よ〜」

洗濯物をたたんだあとなら、

「これ、タンスになおしとって」

そして、

「ランドセル、なおしとかんばよ〜」

どれも意味は「片づける」「しまう」。

長崎では、わざわざ「片づける」という言葉に置き換える必要もなく、「なおす」と言えば自然に意味が伝わります。

だからこそ、長崎で生まれ育った人の中には、

「え?“なおす”って普通に使わんと?」

と思う人もいるかもしれません。

こういう、自分では方言だと気づいていない言葉。

実はこれが一番面白かったりします。


「これ、なおしとって」で起こる小さなすれ違い

例えば、長崎出身の人が県外で誰かに、

「これ、なおしといて」

とお願いしたとします。

長崎の感覚なら、

「これ、片づけておいて」

という意味です。

ところが、「なおす=修理する」という意味に馴染みのある人なら、

「え?どこか壊れてる?」

となることも。

どちらも同じ「なおす」という言葉を使っているのに、頭の中に浮かんでいる行動はまったく違います。

こうした小さな“言葉のすれ違い”も、方言の面白いところ。

そして何より面白いのは、長崎の人自身は「今、方言を使った」なんてほとんど思っていないことです。

「ばってん」や「〜ばい」なら、長崎弁という感覚があります。

でも、

「それ、なおしとって」

は、あまりにも日常。

方言というより、普通の日本語として使っている感覚に近いのかもしれません。


「直す」「治す」そして「なおす」

さらに考えてみると、「なおす」という言葉そのものも面白いものです。

壊れた自転車なら、

「自転車ば直す」。

病気やケガなら、

「しっかり治す」。

そして長崎では、出しっぱなしの物なら、

「元の場所になおす」。

会話をしているときには、もちろん漢字なんて見えません。

それでも長崎の人は、前後の会話や状況から自然に意味を判断しています。

例えば、

「自転車、なおしとって」

と言われても、自転車が壊れているのか、それとも出しっぱなしになっているのかで意味は変わります。

普段はまったく意識しませんが、こうやって改めて考えてみると面白いですよね。


実は長崎だけじゃない?西日本にもある「なおす」

そして「なおす=片づける」という使い方。

実は、長崎だけに限ったものではありません。

関西や九州をはじめ、西日本のさまざまな地域で使われている表現として知られています。

つまり、「長崎だけの方言」というより、

長崎でも昔から自然に使われてきた、西日本に広く見られる言葉

と考える方が近そうです。

もちろん、同じ西日本でも地域や世代によって使い方には違いがあります。

一方、関東などでは「なおす」と聞くと、「壊れたものを修理する」という意味を思い浮かべる人も多い。

同じ日本語なのに、暮らしている地域によって受け取り方が変わる。

方言というと語尾やイントネーションに注目しがちですが、同じ言葉なのに意味が違うというのも地域の言葉の面白さです。


方言だと思っていなかった「方言」

長崎弁と聞いて思い浮かべるのは、

「ばってん」

「〜ばい」

「〜たい」

「とっとっと?」

「好きばい!」

といった、いかにも長崎らしい言葉かもしれません。

もちろん、こうした言葉も長崎の大切な文化です。

でも街で暮らしていると、もっと気づきにくい方言があります。

それが今回の「なおす」のような、

ずっと普通だと思って使ってきた言葉。

家族との会話。

学校での会話。

近所の人との会話。

そんな日常の中で何十年も使われ続けてきた言葉には、観光パンフレットには載っていない、その土地の暮らしが残っています。

県外の人と話したときに初めて、

「え?これ通じらんと?」

と気づく。

こういう言葉こそ、暮らしの中に残っている“リアルな方言”なのかもしれません。


言葉から見えてくる、長崎の暮らし

方言というと、少し昔の言葉というイメージを持つ人もいるかもしれません。

でも「なおす」は、今でも普通に家庭の中で使われています。

子どもの頃、自分が親から、

「ランドセルなおしとかんばよ」

と言われていた。

そして大人になった今、自分の子どもに、

「ランドセルなおしとかんばよ」

と言っている。

そう考えると、方言は辞書の中に残っているものではなく、暮らしの中で親から子へ自然に受け継がれているものなのだと感じます。

誰かが「長崎弁を残そう」と意識しているわけでもない。

ただ普通に暮らして、普通に話している。

その結果、昔から使われてきた言葉が今も街の中に残っている。

そんなところにも、長崎という街の面白さがあるのかもしれません。


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SAKAMACHI SUPPLYでは、長崎の坂や海、猫、そして方言など、この街の日常にあるものをモチーフにしています。

「とっとっと?」

「好きばい!」

「ばりぬっか!」

そんな分かりやすい長崎弁も面白い。

でも今回の「なおす」のように、

自分たちでは方言だと思っていなかった言葉

にも、その街らしさは隠れています。

今回アイキャッチに使ったのも、長崎の夜の街で何気なく撮った一枚。

「なおす」という言葉とは直接関係ありません。

でも、昔ながらの建物や看板、細い路地、そこに流れる長崎の夜の空気。

そんな何でもない街の風景が、今回のテーマには妙に似合う気がしました。

長崎に暮らしていると、それほど珍しい景色ではありません。

「なおす」という言葉も同じです。

毎日見ているから、特別だと思わない。

毎日使っているから、方言だと思わない。

でも少し違う場所から見てみると、

「あれ?これって長崎らしいのかも。」

と気づく。

有名な観光地だけが、長崎ではありません。

いつもの路地。

いつもの坂。

いつもの海。

そして、いつもの会話。

そんな何気ない日常の中から、この街の面白さを見つけていく。

それも、SAKAMACHI SUPPLY、そしてNAGASAKI MAGAZINEでやっていきたいことのひとつです。


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まとめ|「ランドセル、なおしとかんばよ」

「ランドセル、なおしとかんばよ〜」

長崎では、なんてことのない日常のひと言です。

子どもの頃、自分が言われていた人もいるでしょう。

そして今では、自分の子どもに同じ言葉を使っている人もいるかもしれません。

「なおす」が方言なのかどうかなんて、普段は考えもしない。

それくらい自然に、長崎の暮らしの中にある言葉です。

でも県外へ行けば、意味が伝わらないことがある。

調べてみれば、長崎だけでなく西日本のさまざまな地域にも同じような使い方がある。

たった一つの「なおす」という言葉からでも、地域による言葉の違いや、そこで暮らす人たちの文化が少し見えてきます。

観光地を巡るだけでは気づかない長崎。

暮らしている自分たちでさえ、普段は気づかない長崎。

そんな“当たり前の中にある長崎”を見つけるのも、この街の面白さなのかもしれません。

次に誰かから、

「それ、なおしとって〜」

と言われたら、ちょっとだけこの話を思い出してみてください。

そしてもちろん長崎では、その意味は――

「修理しとって」ではなく、「片づけとって」。

今日もきっと、長崎のどこかで普通に使われています。

この街の日常が、デザインになる。


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