
「そういえば、いいところがある。」から始まった寄り道
妻と娘と買い物へ出かけようとしていた、ある日のこと。
その途中でふと、
「あ、そういえばいいところがある。」
と思い出しました。
向かったのは、長崎市香焼町の海老瀬地区。
香焼総合公園から堀切方面へと道を下っていった先にある、小さな海岸です。
観光地として大きく紹介されている場所でもなければ、海水浴場として整備された場所でもありません。
でもここには、
昔から変わらない、香焼の海があります。
今回は、ちょっと立ち寄るだけのつもりだった海老瀬の海岸を歩いてみました。
……本当に「ちょっと」のつもりだったんですけどね。
目の前に磯があったら、そりゃ行きます。
香焼人の血が騒ぎました。笑
香焼・海老瀬の海岸へ
海老瀬は、香焼総合公園から堀切方面へ下っていったあたりにある地区です。
長崎市の資料にも「海老瀬」という地名が確認できますが、「海老瀬海岸」という名称が正式な海岸名なのかは今回確認できませんでした。
そのため、この記事では「香焼・海老瀬の海岸」として紹介していきます。
香焼総合公園は香焼町の天神山一帯に整備された公園で、展望台からは長崎港や伊王島、高島などを望むことができます。
そこから海側へ。
堀切方面へ向かって細い道を下っていくと、少しずつ景色が変わっていきます。
住宅が点在する静かな道。
木々の間から見え始める海。
そして坂を下った先に現れるのが、今回の目的地です。

派手な看板もありません。
観光地へ向かっているような雰囲気もありません。
むしろ、
「この先に本当に海があるんかな?」
そんな道を進んでいく感じ。
こういう場所、好きなんですよね。笑
道の先に現れた、驚くほど綺麗な海
海岸へ出ると、最初に目に飛び込んでくるのがこの景色。

いや……
綺麗。
久しぶりに来ましたが、こんなに綺麗だったかなと思うほど。
小さな砂浜。
透き通った海。
左右には自然の岩場が残り、その向こうには長崎の島々や海を行き交う船が見えます。
大きな海水浴場とはまったく違います。
売店もなければ、海の家もない。
綺麗に整備された遊歩道があるわけでもありません。
だからこそ、
「昔からここにあった海」
という感じがします。
子どもの頃に見ていた「香焼の海」を思い出した
自分は香焼で育ちました。
この場所の存在も子どもの頃から知っています。
ただ、香焼のいわゆる「裏側」にあたる場所で、こちらまで来ることはほとんどありませんでした。
だから今回、久しぶりにこの海を目の前にして、なんとも言えない懐かしさを感じました。
以前NAGASAKI MAGAZINEでも紹介した竹崎海水浴場は、自分の実家のすぐ近く。
もちろん今でも大好きな場所です。
ただ、自分が子どもの頃から比べると周辺の道路が埋め立てられたり、砂が入れ替えられたりして、海岸の雰囲気はずいぶん変わりました。
それに対して海老瀬の海は、
「ああ、昔の香焼の海ってこんな感じだったな。」
と思わせてくれます。
岩があって。
磯があって。
小さな砂浜があって。
海の水が岩の間に入り込んで。
潮が引けば、また違う景色が現れる。
人工的に整えられた海ではなく、
自然の形がそのまま残っている海。
それがなんだか、すごく嬉しかったんです。
ちょっと見るだけのつもりが……
最初は本当に、家族で少し海を見るだけの予定でした。
このあと普通に買い物へ行く予定です。笑
ところが……
海岸へ下りて、
岩場を見る。
その先にも岩場が続いている。
さらにその奥にも何かありそう。
……
行くよね。笑

子どもの頃から香焼の海で遊んできた人間にとって、目の前に磯があったら素通りできません。
気づけば岩の上を歩きながら、どんどん奥へ。
香焼人の血が騒ぎます。笑
岩場を進むと、景色がどんどん変わっていく
海老瀬の面白さは、砂浜だけではありません。
少し岩場へ入るだけで景色が一気に変わります。

岩のくぼみに海水が残った小さな潮だまり。
透明な水。
何層にも重なっているように見える岩肌。
場所によって岩の形も色も違います。
さらに進んで振り返ると、

さっきまで立っていた砂浜が、ずっと向こうに見えます。
同じ海岸なのに、ほんの数分歩いただけでまったく違う場所に来たような感覚。
こういうのが磯歩きの面白さなんですよね。
海のすぐ横に残る、自然の岩肌
さらに奥へ進むと、海岸沿いにはかなり迫力のある岩肌も残っています。

観光名所でもありません。
「○○岩」なんて名前が付いているわけでもない。
たぶん、ほとんどの人が知らない景色です。
でも自分には、こういう何でもない場所の方が面白かったりします。
岩の形。
潮の跡。
岩の隙間。
波の音。
その全部が、
「ずっと昔からここにあったんだろうな」
と思わせてくれます。
岩場の先から眺める長崎の海
少し奥まで歩いてから海を見ると、視界が一気に開けます。

目の前には広い海。
遠くには山々や島影。
船がゆっくりと進んでいきます。
振り返ると造船所の巨大なクレーン。

自然の海と、長崎を象徴する造船の風景。
この二つが同じ視界に入るのも、香焼らしい景色だと思います。
そもそも香焼は「島」だった
ここで少しだけ香焼の話を。
現在の香焼は道路で長崎半島とつながっているため、普段生活しているとあまり意識することはありません。
でも香焼は、もともと島でした。
長崎市によると、1971(昭和46)年に完成した臨海工業用の埋め立てによって、長崎半島と陸続きになったそうです。
つまり、今自分たちが普通に車で走っている場所の一部は、昔は海だったということ。
そう考えながら海老瀬のような昔ながらの海岸を見ると、また少し違って見えてきます。
香焼がまだ「島」だった頃。
その頃から、こんな岩場と海がここにあったのかもしれません。
近くに残る「香焼浄化センター」
海老瀬の海岸近くには、現在は使用されていない「香焼浄化センター」があります。
調べてみると、香焼浄化センターは1980(昭和55)年7月7日に供用を開始し、2007(平成19)年6月に機能を停止しています。
普段何気なく見ていた施設にも、ちゃんと歴史があります。
海岸の周辺を歩いていると、
自然の海。
昔からの集落。
現在は使われなくなった施設。
造船所。
いろんな時代の香焼が、一つの景色の中に残っているようにも感じます。
綺麗な海だからこそ、気になったもの
ただ今回、綺麗だなと思うだけでは終わりませんでした。
砂浜には流木が流れ着いていました。
大きな木。
枝。
海藻。
それ自体は自然の海岸らしい風景です。
ところが、その中に混じっているものがあります。

プラスチック。
発泡スチロール。
容器。
いろいろなゴミです。
どこから流れてきたものなのかは分かりません。
でもこれだけ綺麗な海を目の前にすると、余計に目につきました。
以前、家族でこの海岸を掃除したことがある
実は1〜2年ほど前、この海岸で行われた地域のボランティア活動に家族で参加したことがあります。
みんなで海岸へ下りて、漂着したゴミを拾いました。
その時もかなりの量だった記憶があります。
今回久しぶりに訪れて、
海はやっぱり綺麗だった。
昔と変わらない岩場も残っていた。
だからこそ、
この景色を、このまま残していけたらいいな。
と改めて思いました。
海から流れ着くゴミをすべて防ぐことは簡単ではありません。
でも少なくとも、自分たちがここへ来てゴミを残さない。
そして機会があれば、また拾う。
それだけでもいいんじゃないかなと思います。
そして、海岸をあとにしようとしたら……
そろそろ買い物へ行こうか。
そう思って海岸から戻っていると……

いました。笑
猫ちゃん。
こんなところでNAGASAKI MAGAZINEの「猫」まで回収してくるとは。笑
野良猫なのか、近くのお家の猫なのかは分かりません。
こちらをじーっと見ながら、のんびり。
海を歩いた最後にこんな出会いまであると、なんだか得した気分です。
有名な観光地ではない。でも、それがいい。
海老瀬の海岸には、有名観光地のようなものは何もありません。
大きな駐車場があるわけでもありません。
観光客向けの施設があるわけでもありません。
でも、
綺麗な海があって、
昔ながらの磯があって、
船が通って、
遠くに造船所が見えて、
静かな集落があって、
たまに猫がいる。笑
自分にとっては、それで十分です。
むしろ、
何もないからこそ残っている景色なのかもしれません。
訪れるなら、静かに。
今回紹介した海岸の周辺には民家があります。
海の近くまで車で入れる場所もありますが、観光地として整備された駐車場ではありません。
そのため訪れる場合は、路上駐車や騒音などで地域の方の迷惑にならないよう十分な配慮をお願いします。
また岩場は濡れている場所や足元の悪い場所もあります。
今回、自分はついつい奥まで行ってしまいましたが(笑)、潮の満ち引きや天候によって状況は大きく変わります。
無理をせず、安全な範囲で海を楽しんでください。
SAKAMACHI SUPPLY的な視点
SAKAMACHI SUPPLYで大切にしているのは、
有名な観光地だけではなく、この街で暮らしているからこそ気づく風景や日常です。
海老瀬の海岸も、まさにそんな場所でした。
観光地として整備された海ではなく、砂浜があって、磯があって、流木が流れ着いていて、すぐ近くには昔からの暮らしがある。
派手なものは何もないけれど、そこにはずっと昔から変わらない「香焼の海」が残っています。
子どもの頃から当たり前のように海が身近にあった自分にとって、久しぶりにこの場所を歩いて感じたのは、懐かしさだけではありませんでした。
「こういう景色って、これから先も残っていてほしいな。」
そんなことを素直に思いました。
一方で、砂浜には流木と一緒に漂着したゴミも見られます。
海がきれいだからこそ、その光景は余計に気になります。
以前、家族でこの海岸の清掃活動に参加したことがありますが、今回改めて歩いてみて、この景色を楽しむことと、この景色を守っていくことはセットなのかもしれないと感じました。
SAKAMACHI SUPPLYがデザインしたいのは、長崎の有名な場所だけではありません。
坂、海、猫、方言、そして名前もあまり知られていない街の風景。
そこに暮らす人にとっては何でもない日常でも、少し見方を変えれば、その街にしかない魅力になる。
海老瀬の海岸も、そんな「長崎の日常そのものが魅力になる場所」のひとつだと思います。
この街の日常が、デザインになる。
その言葉を、改めて実感させてくれた香焼の海でした。
🛍️ SAKAMACHI SUPPLY
SAKAMACHI SUPPLYでは、長崎の「坂」「港」「方言」「街の風景」をモチーフにしたアイテムを展開しています。
長崎を知っている人には「懐かしい」。
長崎を知らない人には「なんだろう?」と思ってもらえる。
そんな**「長崎らしさ」**を、シンプルなデザインに込めています。
まとめ|昔の香焼に、少しだけ会えた気がした
買い物へ行く前に、
「ちょっと寄ってみようか。」
それくらいの気持ちで訪れた海老瀬。
でも海を見て、
磯を歩いて、
岩の上から景色を眺めているうちに、
いつの間にかすっかり探索になっていました。笑
そして何より嬉しかったのは、
自分が子どもの頃に見ていたような香焼の海が、今もここに残っていたこと。
街は変わります。
道路も変わります。
海岸の姿も少しずつ変わっていきます。
香焼も、かつて島だった頃から大きく姿を変えてきました。
それでも海老瀬には、
岩があり、
磯があり、
透明な海があり、
昔ながらの香焼を感じられる風景が残っていました。
こういう場所って、
もしかすると有名な観光地よりも、自分たちにとっては大切なのかもしれません。
昔のままの香焼の海。
これから先も、
できるだけこの景色が変わらず残っていてほしい。
そんなことを思いながら海岸をあとにしました。
……
ちなみにこのあと、
ちゃんと買い物には行きました。笑
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この記事を書いた人
道下 真悟(みちした しんご)
有限会社長崎ダイレクトセンター 代表取締役 / Web解析士
長崎生まれ、長崎育ち。
Webサイト制作やDM発送など、企業の情報発信をサポートする仕事に携わる一方で、休日や仕事の合間にはカメラを片手に長崎の街を歩き、坂道や路地、海、港、歴史ある街並みを巡っています。
NAGASAKI MAGAZINEでは、実際に自分の足で歩き、見て、感じた長崎の魅力を写真とともに発信中。
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