
ずっと気になっていた「地獄坂」へ
長崎には、名前を聞いただけで一度歩いてみたくなる坂があります。
そのひとつが、長崎市相生町にある「相生地獄坂」。
実はここ、SAKAMACHI SUPPLYを始めた頃からずっと気になっていた場所でした。
長崎の坂を調べ始めた頃から名前をよく目にしていて、一度は歩きに行こうとしたこともあります。
ただその日は、オランダ坂、ドンドン坂、そして最後にきゃあまぐる坂。
そのあと地獄坂へ向かう予定でしたが・・・。
足が、もう言うことを聞きませんでした(笑)。
あれからいろいろな坂や街を歩き、NAGASAKI MAGAZINEの記事も増えてきました。
そして今回、ようやく相生地獄坂へ。
結果から言えば、あのとき無理して行かなくてよかったのかもしれません。
当時だったら「きつい坂だった」「景色がきれいだった」で終わっていたかもしれない。
でも今は、坂そのものだけではなく、その周りにある家や細道、そこで暮らす人たちの日常にも目が向くようになりました。
今だからこそ見えたものが、たくさんありました。
石橋電停から、地獄坂へ
今回のスタート地点は石橋電停。
石橋電停付近から歩き始め、相生地獄坂を登り、祈念坂方面へ。その後グラバースカイロードへ向かい、最後はスカイロードで下って石橋電停方面へ戻るルートです。
距離だけを見れば、それほど長いコースではありません。
問題は、距離ではなく高さです(笑)。

石橋電停から住宅街へ。
少し歩いていくと、だんだんと階段のある長崎らしい風景へ変わっていきます。

さらに進むと、目の前には上へと続く階段。

長崎市公式観光情報では、相生地獄坂は223段の階段として紹介されています。
名前だけなら何度も見てきました。
きつい坂だということも知っていました。
でも、実際に目の前にすると話は別。
「これ、登るんよね……?」
さあ、ようやく念願の地獄坂です。
これが相生地獄坂。名前に偽りなし(笑)

登り始めて、すぐに分かりました。
これは、きつい(笑)。
一段一段は普通の階段でも、それが途切れず上へ上へと続いていきます。
しかも階段の両側には家々が並んでいる。
観光のためにつくられた階段を歩いているというより、人が実際に暮らしている場所の中を歩いているという感覚の方が強くありました。
この日は真夏のような暑さではありませんでした。
それでも登っているうちに、どんどん汗が出てきます。
途中で振り返る。
そして、また登る。

周囲を見ながら歩いていると、昔からありそうな家が多いのも印象的でした。
すれ違ったのも年配の方が多く、ところどころには空き地もあります。
急な斜面に階段。
ここで暮らすということは、買い物や外出ひとつをとっても、平地とは違う大変さがあるんだろうな。
そんなことを考えながら登っていました。
坂の途中で出会った、ちょっとやさしい時間
階段もそろそろ終わるかな、というあたり。
一軒のお宅の前で、おばあちゃんと業者さんらしき方が話をしていました。
どうやら何かの修理か確認をお願いしていたようですが、特に異常はなかった様子。
業者さんは、
「何もなかったから大丈夫ですよ。お金もいらないですよ」
という感じで帰ろうとしていました。
すると、おばあちゃんは、
「ここまで来てもらったんだから」
と、お金を払おうとしている。
業者さんは「何も修理してないし、材料も使ってないからいいですよ」と断る。
それでも、おばあちゃんは申し訳なさそうにしていました。
その横を通りながら、なんだか少し心が温かくなりました。
僕自身、この階段を実際に登ってきた直後だったから、余計にそう感じたのかもしれません。
この場所で暮らしているおばあちゃんだからこそ、「ここまで来る大変さ」を誰よりも分かっている。
だから「わざわざここまで来てもらった」という気持ちが自然に出たのかな。
もちろん、これは僕の勝手な想像です。
坂の上で暮らしている人がみんな同じというわけでもありません。
でも、日々の生活の中で平地とは少し違う大変さを経験しているからこそ、人の大変さにも自然と目が向くことがあるのかな。
そんなことまで考えてしまいました。
横を通るとき、
「こんにちは」
と声をかけると、おばあちゃんも業者さんも、
「こんにちは」
と優しく返してくれました。
「地獄坂」という名前とは正反対の、ちょっとやさしい時間でした。
体力づくり坂。そりゃ体力つくわ(笑)
そして、その少し先。
ここまで登ってきたところで、こんな看板を発見しました。

「相生地獄坂(体力づくり坂)」
これを見た瞬間、
「そりゃこれ登りよったら体力つくわな……」
思わず一人でつぶやきました(笑)。
今回撮影した看板には「聖徳太子参道 222/350段」とも書かれています。
地獄坂を登っている途中に「体力づくり坂」と言われても、こちらはすでに十分体力を使っています(笑)。
それでも、まだ上へ。

ようやく上までたどり着いた頃には、しっかり汗だく。
「地獄坂」——名前に偽りなしです。
登り切ったら、まさかの道に迷う(笑)
事前に地図を見て、
「地獄坂を登ったら、次は祈念坂へ」
とルートは頭に入れてきたつもりでした。
ところが。
地獄坂を登り切った達成感と疲労で、完全に思考停止(笑)。
なぜか細い道へ入っていきます。

「ん?」
進む。
「・・・こっちか?」
さらに進む。
行き止まりでした(笑)。
でも、せっかく迷い込んだので写真は撮る。
以前だったら「道を間違えた」で終わっていたかもしれません。
最近はこういう予定外の道も、なんとなく面白く感じるようになりました。
目的地だけを見ていたら入らなかった細道。
これも、自分の足で歩いたから出会った長崎の風景です。
ようやく祈念坂へ・・・と思ったら
道を戻り、ようやく祈念坂方面へ。

大浦天主堂の脇にある祈念坂。
石畳と周囲の歴史的な景観が残る、南山手らしい坂道です。

せっかくなので、ここもゆっくり歩いて撮影したい。
・・・と思ったのですが。
この日はちょうど坂の途中で、結婚式の前撮りらしき撮影が行われていました(笑)。
さすがにその中へズカズカ入って写真を撮るわけにもいかない。
今回は手前から眺める程度にして、ここでUターンしました。
祈念坂については、また改めてじっくり歩いてみたいと思います。
地獄坂を登ったあとだから、見え方が変わった
祈念坂から戻り、次はグラバースカイロード方面へ。
途中には、垂直エレベーターの入口もありました。

ここまで地獄坂を自分の足で登ってきたあとだったので、この設備を見る目も少し変わりました。
南山手周辺は斜面地に住宅が広がり、長い階段や坂が日常の移動経路になってきた地域です。
その斜面地の移動を支えるために整備されたのが、グラバースカイロード。
斜行エレベーターは2002年に供用が始まり、その後、垂直エレベーターも整備されました。
観光で訪れた人にとっては便利な移動手段。
でも実際に周辺を歩いてみると、それだけではないことがよく分かります。
ここで暮らす人たちの日常を支える「生活の足」でもあるんです。
地獄坂を登る前に見ていたら、
「便利なエレベーターがあるな」
くらいにしか思わなかったかもしれません。
でも223段の階段を自分の足で登ったあとだと、
「これがあるのとないのでは、全然違うだろうな」
ということを、少しだけ実感できました。
歩いて登ったからこそ見えた景色
そして、スカイロードの横から見た景色。

これはもう、説明はいらないかもしれません。
いい景色でした。
しかも今回は、下から地獄坂を自分の足で登ってきています。
汗だくになって、途中で道まで間違えて(笑)、ようやくたどり着いて見る長崎の街。
だから余計によく見えたのかもしれません。

長崎は「坂の街」とよく言われます。
高い場所から見下ろす長崎の景色は、確かにきれいです。
でも、その景色の中に見えている家々では、誰かが毎日暮らしています。
坂を登って初めて、景色の向こう側にある暮らしのことまで少し考えるようになりました。
スカイロードで出会った、おじいさん
帰りは時間の都合もあり、グラバースカイロードで下ることにしました。
乗ろうとすると、上から一人のおじいさんがやってきました。
正直、
「一人なら写真とか動画も撮りやすかったんだけどな(笑)」
なんて思っていました。
すると、そのおじいさんから、
「観光ですか?」
と声をかけられました。
「いえ、長崎人なんですけど、最近こういう長崎のいい所を写真に収めてて」
と話すと、
「どうぞ、どうぞ」
と、写真や動画を撮りやすい場所を譲ってくれました。
少し話してみると、この辺りに住んでいる方のようでした。
そして笑いながら、
「毎日見てるけん、俺たちは景色とかもうなんも感じらんもんね~」
と。
なんだか、この言葉が妙に残りました。

僕にとっては、地獄坂を登り切ったあとに見る特別な景色。
でも、ここで暮らしている人にとっては毎日見るいつもの景色。
同じ場所でも、見る人や見るタイミングによって全然違う。
NAGASAKI MAGAZINEを始めてから、そんな「長崎では当たり前になっている景色」を改めて見ることが増えました。
この日のおじいさんとの短い会話は、それをもう一度思い出させてくれた気がします。
スカイロードを下りて、もう一度見上げる
そのままグラバースカイロードで下へ。
そして下りたところで、最後にもう一度、今度は下からスカイロードを見上げてみました。

地獄坂を自分の足で登り、最後はこのスカイロードで下ってきた今回のまち歩き。
こうして下から見上げると、改めてこの高低差の中に人の暮らしがあることを実感します。

登る前と、実際に歩いたあと。
同じ斜面を見ても、少し見え方が変わった気がしました。
便利な設備があること。
そのすぐ近くには、昔から使われてきた階段があること。
そして、その坂の途中には今も人の暮らしがあること。
最後は再び石橋電停方面へ。
こうして今回の相生地獄坂のまち歩きは終了です。
観光地である前に、誰かの暮らす場所
今回歩いた南山手周辺は、観光で訪れる人も多い場所です。
実際、この日もグラバースカイロードでは多くの観光客を見かけました。
一方で、相生地獄坂を歩いていると、その印象は少し変わります。
階段のすぐ横には家があり、そこで暮らしている人がいる。
今回出会ったおばあちゃんのように、この坂を日々の生活の中で使っている人たちがいます。
グラバースカイロードも同じです。
観光で訪れる人にとっては、長崎らしい景色を楽しめる場所。
でも地域の方にとっては、毎日の上り下りを支える大切な生活の足でもあります。
写真を撮りたくなる景色もたくさんあります。
だからこそ、住宅の前で長時間立ち止まったり、大きな声を出したり、通行の邪魔になったりしないように。
「見に来た場所」ではなく、「お邪魔して歩かせてもらっている場所」。
そんな気持ちは忘れずに歩きたいなと思いました。
今回スカイロードで出会ったおじいさんとの何気ない会話も、そんなことを改めて考えるきっかけになりました。
SAKAMACHI SUPPLY的な視点
相生地獄坂を歩く前は、正直、
「名前のすごい、めちゃくちゃきつい坂」
というイメージが一番強くありました。
実際、めちゃくちゃきつかったです(笑)。
でも今回印象に残ったのは、階段の数や急勾配だけではありませんでした。
階段沿いに並ぶ家。
そこで暮らす人。
坂の途中で交わされていた、おばあちゃんと業者さんのやり取り。
そして、斜面地の暮らしを支えるグラバースカイロードと、そこで出会ったおじいさん。
坂は、眺めるものではなく、誰かが毎日使っている道でもある。
SAKAMACHI SUPPLYのテーマは、
「この街の日常が、デザインになる。」
今回歩いた相生地獄坂には、まさにその「日常」がありました。
有名な坂だから歩いてみた。
でも実際に歩いてみると、その名前の向こう側にあったのは、人が暮らす長崎の風景でした。
🛍️ SAKAMACHI SUPPLY
SAKAMACHI SUPPLYでは、長崎の「坂」「港」「方言」「街の風景」をモチーフにしたアイテムを展開しています。
長崎を知っている人には「懐かしい」。
長崎を知らない人には「なんだろう?」と思ってもらえる。
そんな「長崎らしさ」を、シンプルなデザインに込めています。
まとめ|地獄坂で見つけたのは、坂の先の日常だった
ずっと気になっていた、相生地獄坂。
最初に行こうとしたあの日は、足が動かなくなって断念しました。
でも今思えば、それでよかったのかもしれません。
いろいろな坂を歩き、いろいろな街を見てきた今だったから、階段のきつさだけではなく、その周りにある暮らしにも目が向きました。
223段の地獄坂。
体力づくり坂の看板。
坂の途中で出会った人たち。
疲れて道を間違えた細道。
祈念坂。
そして、グラバースカイロードから眺めた長崎。
距離としては、それほど長いまち歩きではありません。
それでも、今回も歩いた分だけ見えるものがありました。
そしてスカイロードの先には、まだ歩いていない道があります。
グラバー園方面へ続く道も、今度は自分の足で歩いてみたい。
次は、あの先へ。
またひとつ、歩いてみたい長崎の道が増えました。
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NAGASAKI MAGAZINEは、長崎の坂や方言、港町の風景、歴史、そして暮らしの魅力を発信するWEBマガジンです。
「長崎って面白い。」
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この記事を書いた人
道下 真悟(みちした しんご)
有限会社長崎ダイレクトセンター 代表取締役 / Web解析士
長崎生まれ、長崎育ち。
Webサイト制作やDM発送など、企業の情報発信をサポートする仕事に携わる一方で、休日や仕事の合間にはカメラを片手に長崎の街を歩き、坂道や路地、海、港、歴史ある街並みを巡っています。
NAGASAKI MAGAZINEでは、実際に自分の足で歩き、見て、感じた長崎の魅力を写真とともに発信中。
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