真夏の国分町を歩く|昭和と近代が交差する、長崎の特別な風景

あの先が、ずっと気になっていた

少し前、長崎市小菅町にある「小菅修船場跡」、通称そろばんドックの周辺を歩きました。

古いレールや建物、海、工場の風景。

そこには、自分が生まれるよりずっと前の長崎を感じさせるような、なんとも言えない空気が残っていました。

ただ、前回ゆっくり歩けたのはそろばんドック周辺まで。

そのあと車で海沿いを走ってみると、その先にも気になる風景が続いていました。

古い住宅。

細い階段。

海沿いの工場。

建物の隙間から見える長崎港。

前回の記事の最後に、

「ここ、今度ちゃんと歩いてみたいな。」

と書きました。

そして今回。

本当に歩いてきました(笑)。

今回は小菅側からではなく、戸町側から国分町へ。

真夏の昼間。

相変わらず、とんでもなく暑いです(笑)。

でも歩き始めてすぐに感じました。

前回のそろばんドック周辺とは、また空気が違う。


そろばんドックとは違う、「今も暮らしている町」

前回のそろばんドックで感じたのは、自分が生まれるよりずっと前の長崎でした。

歴史ある修船場の跡や古い建物、レール。

そこだけ時間が止まっているような、不思議な感覚です。

一方、今回歩いた国分町は少し違いました。

古い住宅や町工場が残り、昭和を感じる風景がある。

でも、そこでは今も人が暮らし、工場では仕事が続いています。

そして見上げれば、斜面の上には大きなマンション。

古い長崎と、現在の長崎。

その二つが境目なく、一つの風景になっている。

国分町を歩いて最初に面白いと思ったのが、この「昔と今が混ざった感じ」でした。

海のすぐそばには、昔から続いてきたような家や工場。

その後ろには長崎らしい斜面。

さらにその上には、現代的なマンション。

同じ一枚の風景の中に、いくつもの時代が重なっています。

今回の国分町を一枚で表すなら、個人的にはこの景色。

これ、優勝です(笑)。


国分町は「匂い」と「音」が面白かった

そして今回、写真以上に印象に残ったものがあります。

それが、匂いと音。

戸町側から歩いていくと、まず感じたのが工場から漂ってくる油のような匂いでした。

もちろん感じ方には個人差があると思いますが、自分にはそれが不思議と嫌な匂いではありませんでした。

むしろ、どこか懐かしい。

そして、その工場の匂いの中に、ときどき海の匂いが混ざってきます。

ただ、海老瀬や千々のような自然の海で感じる磯の香りとは少し違います。

目の前には工場があり、船があり、クレーンがある。

そんな「工業の町の海の匂い」とでも言えばいいでしょうか。

さらに住宅地へ入れば、そこには人が生活している町の匂いもある。

工場。

海。

住宅。

いろいろな匂いが混ざり合って、この町独特の空気をつくっているように感じました。

そして面白かったのが、です。

歩いている側の町工場から聞こえてくるのは、

カンカン。

キーン。

という、比較的軽い金属音。

大きな機械が動くというより、人が手を動かして何かを作ったり、直したりしているような音が聞こえてきます。

ところが海の向こうから聞こえてくる音は、また違う。

対岸の大きな造船所の方向から、重機や大きな機械が動いているような低く重たい音が、海を越えて響いてきます。

近くの軽い音。

遠くの重たい音。

その間に、海がある。

これが妙に耳に心地よくて、しばらく聞いていたくなるような感覚でした。

写真では残せない国分町の面白さは、もしかすると、この「音」と「匂い」にあるのかもしれません。


動画で感じる、真夏の国分町

そして今回は、写真だけでは伝わりにくい国分町の空気も動画に残してみました。

海のすぐそばに並ぶ、昔ながらの住宅や工場。

その背後の斜面には、現在のマンションが建っています。

聞こえてくるのは、海の音と風の音。

動画で見ると、今回感じた「昔と今が同じ風景の中にある国分町」が、写真とはまた違って見える気がします。

特別な演出はありません。

ただ、真夏の国分町に流れていた音と風景を、そのまま少しだけ。

よかったら、20秒ほど一緒に眺めてみてください。


「なんじゃこりゃ。」で足が止まった

歩いていると、突然目に入ってきたものがありました。

なんじゃこりゃ。

思わず足が止まりました(笑)。

海のすぐそばに立つ古いクレーン。

その横には植物に覆われた建物のような構造物。

向こうには青い長崎港と、現在の街並みが広がっています。

いつ頃のものなのか、現在どう使われているのか。

詳しいことは分かりません。

でも、妙に格好いい。

古い人工物が海や植物の中に溶け込んで、時間だけがそこに積み重なっているように見えました。

前回のそろばんドックを歩いた時にも、少しだけ「ジブリの世界みたいだな」と感じました。

今回の国分町は、それとはまた違う。

たとえるなら、

天空の城ラピュタの“造船所版”みたいな(笑)。

もちろん完全に個人的な感覚です。

でも、古い機械や工場と自然、その向こうに現在の長崎が同時に見える風景を眺めていると、そんな不思議な感覚になりました。


海と暮らしの境目がないような風景

そして、もう一つ足を止めた場所。

ここは車では何度か通っています。

海側に家が並んでいることも知っていました。

でも、歩いて立ち止まり、改めて眺めてみるとすごい。

石積みの護岸のすぐ上に住宅が並び、その真下まで海が来ています。

「海沿いの家」というより、

海と暮らしの境目がほとんどない。

そんな感じです。

そして後ろを見上げれば、斜面の上には大きなマンション。

海のすぐそばに昔からの住宅があり、その上には現在の住宅がある。

これもまた、国分町で感じた「昔と今が一緒にある風景」でした。


住宅の横に、そのまま残る昭和

細い階段を見つけて入ってみると、また面白いものを見つけました。

色褪せた、昔のコカ・コーラの看板。

こういうものを展示している博物館やレトロな施設なら、それほど驚かなかったと思います。

でも、ここは普通の生活空間。

住宅の横に階段があり、その脇に古い看板が当たり前のように残っています。

「昭和を再現した場所」ではなく、昭和から今まで続いてきた場所。

だから面白い。

新しく作られたレトロではなく、長い時間の中で自然に残ったものが、今の暮らしの中に混ざっています。

車で通っていたら、まず気づかなかったと思います。


歩いて初めて気づいた「戸町番所跡」

そしてもう一つ。

これも歩いていなければ、おそらく気づかなかったものです。

ここ国分町には、江戸時代、長崎港を警備するための戸町番所が置かれていました。

幕府は長崎港の警備を筑前藩と佐嘉藩に命じ、港口を押さえる西泊と戸町に番所が設置されました。両番所には合わせて約1,000人規模が駐留したことから、「千人番所」とも呼ばれたそうです。

現在残る「戸町番所跡四・五・六・七番石標柱」は長崎県指定史跡となっています。

今は静かな住宅地。

でも、この場所から長崎港を眺めてみると、

「確かにここなら港を見渡せるな。」

と少し納得します。

今、目の前に見えるのは造船所やクレーンが並ぶ現在の長崎港。

その同じ港を、江戸時代にはここから警備していた人たちがいた。

何気なく歩いていた道から、突然何百年も前の長崎につながる。

こういう発見があるから、街歩きは面白いんですよね。


車ならあっという間。でも、歩くと全然違う

今回歩いた道に、派手な観光スポットが次々にあるわけではありません。

目的地だけを目指して車で走れば、あっという間に通り過ぎます。

でも、歩いてみると違いました。

工場から漂ってくる匂い。

隙間から見える海。

近くから聞こえる軽い金属音。

海の向こうから響いてくる重たい機械の音。

細い階段。

古い看板。

海の上にせり出すように建つ住宅。

そして、何気なく残されている歴史。

どれも車の窓から一瞬見るだけでは、おそらく気づかなかったものばかりです。

何か特別なものを見に行ったわけではないのに、歩き終わる頃には「特別な場所を歩いた」ような感覚になっていました。


真夏だからこそ歩いてほしい……けど、めちゃくちゃ暑い(笑)

今回歩いたのも、前回の小菅と同じ真夏の昼間。

めちゃくちゃ暑かったです。

汗だらだらです(笑)。

普通なら春や秋をおすすめするところですが、この国分町に関しては、個人的には真夏の昼間が妙に似合う気がしました。

強い日差し。

濃い青空。

キラキラ光る海。

熱を持った道路。

工場から漂う匂い。

そして、あちこちから聞こえる作業の音。

その全部が合わさって、今回感じた国分町の空気になっていたように思います。

もちろん、真夏に歩くなら水分補給など熱中症対策はしっかりと。

また、この道は歩道らしい歩道がない場所も多く、車もそれなりに通ります。

歩く際は周囲の車に十分注意してください。

それでも、

「長崎の街を五感で感じながら歩いてみたい。」

という人には、かなり面白い道だと思います。


前回の小菅から、今回の国分町へ

今回の街歩きのきっかけになったのが、前回訪れた小菅修船場跡、通称「そろばんドック」でした。

小菅修船場は1869年に完成した日本最初の洋式近代的ドックで、船を引き揚げる滑り台がそろばん状に見えたことから「そろばんドック」の名で親しまれています。現在は国指定史跡で、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産でもあります。

前回は、そんな歴史の残るそろばんドック周辺を歩きました。

そして最後に、

「この先も歩いてみたい。」

と思った。

今回の記事は、まさにその続きです。

同じ海沿いの道でも、そろばんドック周辺と国分町では感じる時間も空気も少し違いました。

前回の記事と合わせて読むと、小菅から国分へ続く海沿いの風景を、もう少し楽しんでもらえると思います。

あわせて読みたい|前編・小菅編

真夏の小菅を歩く|そろばんドックで見つけた懐かしい長崎の風景

前回は小菅修船場跡(そろばんドック)周辺を歩きました。

今回の国分町へつながる街歩きの始まりです。

前編「真夏の小菅を歩く」を読む


SAKAMACHI SUPPLY的な視点

SAKAMACHI SUPPLYでは、長崎の坂や方言、猫、海、そして街の日常をテーマにデザインしています。

今回の国分町には、有名な観光地とはまた違う長崎がありました。

海。

工場。

古い家。

階段。

クレーン。

昭和の看板。

そして、その上に建つ現代のマンション。

昔のものを保存して展示しているわけではありません。

昔からあるものの隣で、今も普通に人が暮らしている。

そこが、この町の格好良さなのかもしれません。

SAKAMACHI SUPPLYが大切にしている、

「この街の日常が、デザインになる。」

という言葉。

今回の国分町は、まさにそんな場所でした。

車ならあっという間に通り過ぎる風景も、歩けば足を止めたくなるものがある。

見る。

聞く。

匂いを感じる。

そして、少し立ち止まる。

街を歩くことでしか見つからない長崎を、これからも探してみたいと思います。


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まとめ|何もないように見える道ほど、面白いのかもしれない

前回、そろばんドックから車で走りながら、

「この先、なんか良さそうだな。」

と思ったことから始まった今回の街歩き。

実際に歩いてみると、想像していた以上に面白い場所でした。

何か大きな観光スポットがあるわけではありません。

でも、

古いものと新しいもの。

海と住宅。

小さな工場と大きな造船所。

人の暮らしと長崎港。

いろいろなものが、狭い場所の中にぎゅっと重なっています。

そして何より印象に残ったのは、写真には写らない音と匂いでした。

車で通り過ぎるだけなら、きっと気づかなかったと思います。

前回の小菅もそうでした。

今回の国分町もそうでした。

何もないように見える道ほど、歩いてみると面白いのかもしれません。

汗だらだらになりながら歩いた、真夏の国分町。

また一つ、好きな長崎の風景が増えました。


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この記事を書いた人

道下 真悟(みちした しんご)

有限会社長崎ダイレクトセンター 代表取締役 / Web解析士

長崎生まれ、長崎育ち。

Webサイト制作やDM発送など、企業の情報発信をサポートする仕事に携わる一方で、休日や仕事の合間にはカメラを片手に長崎の街を歩き、坂道や路地、海、港、歴史ある街並みを巡っています。

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